成年後見制度について
– 成年後見制度について
成年後見制度は、心身の障害や疾病などにより判断能力が不十分な方が、日常の生活を営む上で、契約や財産管理について不利益を被ることがないように、家庭裁判所が本人や親族の申立に基づいて、本人の代理をする権限を持った「成年後見人」などを決める制度です。
これには民法に基づく法定後見制度と、任意後見契約に関する法律に基づく任意後見制度とがあります。
●任意後見制度は本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と後見する人、法人(任意後見人といいます)を、自ら事前の契約によって決めておく制度です(公正証書を作成します)。なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。
◆後見制度の仕組み
法定後見制度 | 任意後見制度 | |||
後見 | 保佐 | 補助 | ||
判断能力 | 判断能力が常時欠けている | 判断能力が著しく不十分 | 判断能力が不十分 | 判断能力を有するうちに契約(不十分になって効力開始) |
程度 | ・家族の名前、自分の住所が分からない ・日々の買い物ができず、誰かに代わりにやってもらう必要がある。 ・意識がない状態 |
・日々の買い物はできるが、預貯金の管理や不動産の処分を自分では行うことができない。 | ・預貯金や不動産などの管理を自分でもできるかもしれないが、できるかどうか危惧があるので、誰かに代わりにやってもらうほうが確実である。 | 判断力が充分にある状態 |
援助者 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 | 任意後見人 |
監督人 | 成年後見監督人 | 保佐監督人 | 補助監督人 | 任意後見監督人 |
援助者の権限 | 取消権・代理権 | 同意見・取消権 申立てにより代理権 |
申立てにより同意見・取消権 申立てにより代理権 |
代理権(本人との契約で定められた範囲) |
法定後見制度のしくみ
【「後見」制度とは】
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人または成年後見人が、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、取消しの対象になりません。
【「保佐」制度とは】
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害)により、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人ほさにんの同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでした行為については、本人または保佐人が後から取り消すことができます。ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。また、家庭裁判所の審判しんぱんによって、保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます(※)。
※保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり、保佐人に代理権を与えるためには、自己決定の尊重から、当事者が、同意権等や代理権による保護が必要な行為の範囲を特定して、審判しんぱんの申立てをしなければなりません。また、保佐人に代理権を与えることについては、本人も同意している必要があります。この申立ては、保佐開始の審判の申立てとは別のものです。
【同意権】
本人の行為に成年後見人等が同意することにより、法律的に効果が認められることになります。同意を得ずに締結した契約は取り消すことができます。
【代理権】
本人に代わって契約などの行為を成年後見人等がする権限をいいます。成年後見人等がした行為は、本人がした行為として扱われます。
【仕組みについて】
①家庭裁判所に申立をすることができる人
本人や四親等以内の親族(配偶者・甥姪の子やいとこまで)。申立をする親族がいないときは、市区町村長が申し立てることもあります。
②「成年後見人」等の決定(「後見等開始の審判」)
家庭裁判所では、申立を受けつけた後、本人に関する調査や、裁判所から嘱託を受けた医師による精神鑑定等を行い、おおむね3カ月程度をかけて、成年後見人等を決定しています(「後見等開始の審判」といいます)。
③申立類型を決めるとき
まず、本人のかかりつけ医に相談されることをお勧めします。また、「後見」・「保佐」のときは、精神鑑定が必要ですので、鑑定医を依頼できるかどうかも含めて、ご相談されておくとよいでしょう。
【任意後見制度のしくみ】
「将来病気などをしたときに備えて、判断能力があるうちに代理する人を決めておきたい」。こういうお考えの方にふさわしいしくみです。
任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判が選任する「任意後見監督人の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。
①任意後見契約の締結
自分が信頼しており将来を任せたいと考えている人と、代理してもらう内容について取り決めて契約します。契約書は、公正証書で作ることが法律で定められていますから、公証役場で公証人に作ってもらいます。
②「任意後見監督人選任」の申立
契約書を取り交わした後も、本人の判断能力が十分な間は、この契約は発効しません。しかし、本人の判断能力が低下してきたときには、本人や四親等以内の親族(配偶者・甥姪の子やいとこまで)、この契約を引受けた人(受任者)が、家庭裁判所に対して、「任意後見監督人選任の申立」を行います。
③任意後見の開始
家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから、契約を引受けた人が任意後見人として、契約内容に基づいて後見を始めます。また任意後見監督人は、後見業務が適正に行われるように、後見人の監督・相談助言等を行います。