成年後見制度のトラブルの具体例

– 成年後見制度のトラブルの具体例

◆成年後見制度の市場の動向について

『成年後見制度』(以降、後見制度と呼びます)とは、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人を法的に支える仕組みで、本人や親族などの申し立てに基づき、本人に代わり財産管理や契約行為を行う仕組みです。

昨今、高齢化や認知症患者の増加により成年後見制度が浸透し、最高裁の調査によると、利用者は昨年12月末時点で約18万4千人となっており、毎年1万人以上のペースで増加しています。それに伴い、制度を悪用した後見人による横領や私的利用などの不正の被害額が2014年末で少なくとも総額196億円以上に上っていることが最高裁のまとめで分かっています。

弱者を食い物?成年後見不正弁護士の発生

成年後見制度の利用者数と不正・被害額の推移
成年後見人だった弁護士らによる最近の主な不祥事

【成年後見制度を悪用する弁護士が急増】

2013年8月28日、元岡山弁護士会所属弁護士の福川律美被告(65)に対し、岡山地裁が懲役14年の判決を言い渡した。交通事故や医療過誤の損害賠償請求訴訟で支払われた賠償金のほか、成年後見人として預かっていた財産など、計22件で総額約9億円を着服していたもの。福川被告は着服の事実は認めているものの、1審では着服した資金の流用先などは明らかになっていない。福川被告は9月11日付で控訴している。

10月15日には元香川県弁護士会長の徳田恒光被告(81)の論告求刑が行われ、検察側は懲役2年を求刑した。成年後見人として保管していた3人の預金など420万円を着服したとして業務上横領罪に問われたもので、判決の言い渡しは11月26日である。

10月17日には静岡県弁護士会所属の弁護士だった中川真被告(50)に対し、静岡地裁が懲役3年執行猶予4年の判決を言い渡した。こちらも成年後見人として管理していた女性の預金1460万円を、無断で引き出した横領容疑で、検察は懲役3年を求刑していた。

10月30日には、元東京弁護士会副会長・松原厚被告(76)に対し、東京地裁が懲役5年の判決を言い渡した。成年後見人として管理していた、精神障害のある女性の預金4244万円を着服したとして、業務上横領罪に問われた。

このほか、元九州弁護士会連合会理事長・島内正人被告(66)の論告求刑が11月19日に予定されている。北九州市の女性の成年後見人の男性に、女性の財産を共同で管理するよう裁判所から指示された、というウソをつき、女性の預金4400万円を自分の口座に振り込ませたとする詐欺罪のほか、複数の依頼人からの預かり金約1300万円を横領したとする業務上横領罪にも問われている。

成年後見制度に絡む弁護士の犯罪が頻発している。刑事事件化したことが報道されている弁護士は、この2年間で9人に上る。

9人のうち7人は逮捕前に弁護士登録を抹消しており、逮捕報道時は「元弁護士」という肩書きになっているが、今も2人は弁護士登録を抹消していない。

◆任意後見制度に関係する悪質な犯罪行為にご注意ください

1 任意後見制度を悪用した、財産侵害等の被害が問題になっています!

こんな事件が・・・・
おもに一人暮らしの高齢者に巧みに近づき、時に法律等の専門家であることを強調し、また任意後見制度という公的な仕組みを利用することで安心させて、ご本人にとって重大な財産侵害にあたるような契約等を行うというものです。
身近なところでも・・・・
都内でも、不必要な住宅リフォーム、なんの利益にもならない多額の投資、持ち家や土地の不当に安い価格での売却といった深刻な被害が起きています。

2 任意後見制度とは?

制度のしくみ
将来、認知症などにより判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ「信頼できる人」と任意後見契約を結んでおき、実際に判断能力が低下した際にこの「任意後見人」から財産管理等の必要な支援を受けられるようにするというものです。この契約は公証人により公正証書にされ登記されることが特徴です。

3 実際に判断能力が低下したときには?

「任意後見監督人」がチェック
契約をスタートさせるときは、家庭裁判所が、任意後見人の行為を監督するための「任意後見監督人」というチェックする役割を果たす人を選びます。
したがって、任意後見人がこの制度を悪用して、ご本人の判断能力の低下に乗じてご本人に不利益な財産処分などを好き勝手に行うことはできないような仕組みになっています。

4 どこに問題があるのか?

これまでの事件では・・・・
上記のような事件では、任意後見契約を結んで安心させた上で、実際にはご本人の判断能力が低下しても契約をスタートさせず(スタートさせるためには家庭裁判所に申し出なければなりません)、したがって誰からも監視されることなく、すでに判断能力が不十分となっているご本人を言いくるめて、不適切な契約や財産処分を行って不当な利益を得ていたという点が特徴です。
任意後見制度は、一人暮らしや高齢者だけの世帯が非常な勢いで増加する中、将来の不安を少しでも軽減するために積極的に活用していくべき大切な制度といえます。しかし、残念ながらこうしたいわば制度を隠れ蓑にした犯罪行為があることも事実です。

◆任意後見契約について

日本公証人連合会HPから抜粋
http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

Q

成年後見とか、任意後見とか、法定後見とかいう言葉を聞きましたが、今一つはっきりしません。分かりやすく説明して下さい。

A

平成12年4月1日から、介護保険制度とともに、新しく成年後見制度がスタートしました。これは、判断能力の不十分な人(認知症を発症した高齢者、知的障害者、精神障害者等)を保護し、その人達が最後まで人間として立派に生きていけるようにするための制度です。成年後見という言葉は、未成年後見(未成年者の両親が亡くなると、その保護のために親権者に代わる後見人が選ばれます。)に対する言葉で、成年者ではあるが判断能力の不十分な人について、後見人等を選任して、その人を保護しようとする制度です。
 成年後見制度は、裁判所の手続により後見人等を選任してもらう法定後見制度と、当事者間の契約によって後見人を選ぶ任意後見制度に分かれます。法定後見と任意後見と、どちらの制度を利用したらよいのかを、ごく一般的に言えば、法定後見は、判断能力が既に失われたか又は不十分な状態になり、自分で後見人等を選ぶことが困難になった場合に利用されるものであるのに対して、任意後見は、まだ判断能力が正常である人、又は衰えたとしてもその程度が軽く、自分で後見人を選ぶ能力を持っている人が利用する制度です。

Q

よく、任意後見契約が、将来に備える「老い支度」であるとか、「老後の安心設計」であるとか聞きますが、どういうことですか?

A

我が国は、社会の高齢化が急速に進行中であり、現在65歳以上の人が2488万人おり、その総人口に占める割合は19.5パーセントを占め、実に5人に1人が高齢者という時代を迎えています。そして、今世紀半ばには、実に3人に1人が65歳以上という、超高齢化社会が到来すると予測されています。
 ところで、人間は、年を取ると、次第に物事を判断する能力が衰えてきます。これがひどくなると、認知症(老人性痴呆)と言われるような状態となることがあります。人間はつい、自分だけはぼける心配はないと思いがちですが、我が国の認知症高齢者は、160万人もいると言われています。そして、85歳以上の高齢者になると、実に、4人に1人に認知症が発症すると言われています。
 認知症に罹患して、いわゆるぼけてきますと、自分では、自分の財産の管理ができなくなってしまいます。また、病院等で医師の診断・治療を受けようとしても、病院等と医療契約を締結することもできないし、入院のための契約締結もできないし、施設に入ってお世話を受けようとしても、施設に入るための施設入所契約自体ができなくなってしまいます。介護保険を利用したくても、その手続をすることも大変の上、何より介護を受けるための介護サービス提供契約を締結することができない、ということになってしまします。
 すなわち、年をとってくると、たとえ、いくらお金を持っていても、自分のお金であって自分で使えない、自分で自分に関することが処理できないという事態が起き得るのです。そのようなことを防ぐため、自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、自分がもしそういう状態になったときに、自分に代わって、財産を管理してもらったり、必要な契約締結等を代理でしてもらうこと等を、自分の信頼できる人に頼んでおけば、すべてその人(「任意後見人」と言います。)にしてもらえるわけで、あなたは安心して老後を迎えることができる、というわけです。
 このように、自分が元気なうちに、自分が信頼できる人を見つけて、その人との間で、もし自分の判断能力が衰えてきた場合には、自分に代わって、自分の財産を管理したり、必要な契約締結等をして下さいとお願いしてこれを引き受けてもらう契約を、任意後見契約といいます。
 以上の理由から、任意後見契約は、将来の老いの不安に備えた「老い支度」ないしは「老後の安心設計」であると言われているのです。自分は絶対にぼけない、などと思うのは、しばしば甘い幻想になります。私たちは、自己責任で、将来困らないように備えておくことが、とても大切なのです。
 もとより、任意後見契約を締結しても、それを使わないまま最後まで元気で大往生ができるかもしれません。そのときは、任意後見契約書の作成費用は無駄になってしまいますが、それは微々たるものというべきでしょう。それを使わないで済むことは素晴らしいことですが、備えをしておくことは、とても大切です。
 ちなみに、任意後見契約は、平成12年4月1日にスタートして以来、毎年増え続けており、おおむね前年の20ないし30パーセント増しの割合で増加してきています。

Q

任意後見契約を結ぶには、どうするのですか?

A

任意後見契約を締結するには、任意後見契約に関する法律により、公正証書でしなければならないことになっています。
 その理由は、ご本人の意思をしっかりと確認しなければいけないし、また、契約の内容が法律に従ったきちんとしたものになるようにしないといけないので、長年法律的な仕事に従事し、深い知識と経験を持つ公証人が作成する公正証書によらなければならないと定められているのです。

Q

任意後見人の基本的な仕事の中身は、どういうものですか?

A

任意後見人の仕事は、一つは、本人の「財産の管理」です。自宅等の不動産や預貯金等の管理、年金の管理、税金や公共料金の支払い等々です。もう一つが、「介護や生活面の手配」です。要介護認定の申請等に関する諸手続、介護サービス提供機関との介護サービス提供契約の締結、介護費用の支払い、医療契約の締結、入院の手続、入院費用の支払い、生活費を届けたり送金したりする行為、老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為等々です。
 以上のように、任意後見人の仕事は、本人の財産をきちんと管理してあげるとともに、介護や生活面のバックアップをしてあげることです。なお、任意後見人の職務は、自分でおむつを替えたり、掃除をしたりという事実行為をすることではなく、あくまで介護や生活面の手配をしてあげることです。

Q

契約の内容は、自由に決められますか?

A

任意後見人の基本的な仕事は、上記に述べたとおりですが、任意後見契約は、契約ですから、法律の趣旨に反しない限り、具体的には、当事者双方の合意により、自由にその内容を決めることができます。

Q

任意後見人は、身内の者でもなれますか?

A

成人であれば、誰でも、あなたの信頼できる人を、任意後見人にすることができます。身内の者でも、友人でも全然問題ありません。ただし、法律がふさわしくないと定めている事由のある者(破産者、本人に対して訴訟を提起したことがある者、不正な行為、著しい不行跡のある者その他任意後見人の任務に適しない事由のある人、例えば金銭にルーズな人等)はダメです。
 もとより、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家に依頼してもよいし、また、法人(例えば、社会福祉協議会等の社会福祉法人、リーガルサポートセンター、家庭問題情報センター等々)に後見人になってもらうこともできます。

Q

任意後見人は、1人でないといけないのですか?

A

任意後見人は、複数でも構いません。この場合には、各自が任意後見人としての権限を行使できるとするか、共同してのみその権限を行使できるとするか、どちらかに決めなければいけません。そして、前者の場合には、権限の範囲を分掌する場合と、分掌しないで、単に各自がその権限を行使できるとする場合があります。
 なお、任意後見人を予備的につけることも、可能です。たとえば、Aさんに任意後見人を頼むけど、もしAさんが死亡・事故・高齢等の理由でその職務をとれなくなったときは、予備的にBさんにお願いしておきたいということもできます(ただし、任意後見契約締結後、その登記をする際に、予備的受任者として登記することが認められていないので、契約の形式としては、受任者としてAさんとBさんの両名を選任しておき、Aさんに上記のような事情が発生したときに、Bさんの職務が開始されるように定めることになります。)

Q

任意後見人は、いつから仕事を始めるのですか?

A

任意後見契約は、本人の判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ結ばれるものですから、任意後見人の仕事は、本人がそういう状態になってから、始まることになります。
 具体的には、任意後見人になることを引き受けた人(「任意後見受任者」といいます。)や親族等が、本人の同意を得て、家庭裁判所に対し、本人の判断能力が衰え、任意後見事務を開始する必要が生じたので、「任意後見監督人」を選任して欲しい旨の申立てをします。そして、家庭裁判所が、任意後見人を監督すべき「任意後見監督人」を選任しますと、そのときから、任意後見受任者は、「任意後見人」として、契約に定められた仕事を開始することになります。

Q

任意後見人に、大切な預貯金等を使い込まれる心配はないのでしょうか?

A

もともと、任意後見人は、あなた自身が、最も信頼できる人として、自分で選んだ人です(契約に際しては、真に信頼できる人かどうかをよく吟味して選ぶことがとても大切です。)。しかも、前記のように、任意後見人の仕事は、家庭裁判所によって、任意後見監督人が選任された後に初めて開始されます。したがって、家庭裁判所によって選任された任意後見監督人が、任意後見人の仕事について、それが適正になされているか否かをチェックしてくれます。また、任意後見監督人からの報告を通じて、家庭裁判所も、任意後見人の仕事を間接的にチェックする仕組みになっています。
 さらに、任意後見人に、著しい不行跡、その他任務に適しない事由が認められたときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。
 以上によれば、万一のことをご心配されて、契約を躊躇するよりも、ご自分がしっかりしているうちに、ご自分の判断で、積極的に老後に備える準備をされた方が賢明といえるのではないかと思います。

Q

(通常の委任契約のことについて)
 判断能力が低下したわけではないが、年を取って足腰が不自由になったり、身体能力が衰えて、何事をするにも不自由を感じるようになった場合に備えて、あらかじめ、誰かに財産管理等の事務をお願いしておきたいのですが、これも任意後見契約でまかなえますか?

A

任意後見契約は、判断能力が低下した場合に備えた契約なので、ご質問のような場合には、任意後見契約によることはできず、通常の「委任契約」を締結することにより、対処することになります。
 そして、実際には、このような通常の委任契約を、任意後見契約とともに併せて締結する場合が多いのです。
 何故かと言いますと、任意後見契約は、判断能力が衰えた場合に備えるものなので、判断能力が低下しない限り、その効力を発動することがありませんが、人間は、年を取ると、判断能力はしっかりしていても、身体的能力の衰えは、どうしようもなく、だんだん何事にも不自由を感じるようになってくることがあるからです。極端な話、寝たきりになってしまえば、いくら自分の預貯金があっても、お金をおろすこともできません。そのような事態に対処するためには、判断能力が衰えた場合にのみ発動される任意後見契約だけでは不十分です。通常の委任契約と、任意後見契約の両方を締結しておけば、どちらの事態にも対処できるので安心です。まさに「ボケが出ても、寝たきりになっても大丈夫!」ということになります。そして、判断能力が衰えた場合には、通常の委任契約に基づく事務処理から、任意後見契約に基づく事務処理へ移行することになります。

Q

本人の判断能力が衰えてからでも、任意後見契約を締結できますか?

A

その衰えの程度が軽く、まだ契約締結の能力があると判断されれば、任意後見契約を締結することができます。本人に、契約締結の能力があるかどうかは、医師の診断書、関係者の供述等を参考にして、公証人が慎重に判断して決めます。
しかし、任意後見契約は、本来的には、ご本人が元気で、しっかりしているうちに、自ら、将来の事態に備えて、自分が一番信頼できる人を自分の目で選び、その人とあらかじめ契約をして準備しておくというもので、既に認知症の症状が出てきた場合には、むしろ、法定後見の制度を利用した方が無難でしょう(家庭裁判所に、法定後見の申立てをして、鑑定及び調査の結果認められた判断能力の不十分さの程度に応じて、後見、保佐、補助等の開始の審判を受け、それに対応して家庭裁判所で選任された後見人、保佐人、補助人がその事務を処理することになります。)。

Q

任意後見契約は、登記されるそうですが、どうしてですか?

A

任意後見契約は、公証人の嘱託により、法務局で登記されることになります。したがって、任意後見人は、法務局から、任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した「登記事項証明書」の交付を受けて、自己の代理権を証明することができますし、取引の相手方も、任意後見人から、その「登記事項証明書」を見せてもらうことにより、安心して本人との取引を行うことができるというわけです(すなわち、登記事項証明書は、法務局が発行する信用性の高い委任状という役割を果たすことになり、これにより、任意後見人は、本人のために、その事務処理を円滑に行うことができます。)。
 ちなみに、登記される事項は、下記のとおりです。

1. 任意後見監督人の選任前
 本人、任意後見受任者、代理権の範囲

2. 任意後見監督人の選任後
 本人、任意後見人、任意後見監督人、代理権の範囲

Q

任意後見契約を結ぶには、どんな書類が必要ですか?

A

下記の書類を揃えて下さい(発行後3か月以内のものに限ります。)。

1. 本人について・・・・印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票

2. 任意後見受任者について・・印鑑登録証明書、住民票

Q

任意後見契約公正証書を作成する費用は、いくらでしょうか?

A

下記のとおりの費用がかかります。

1. 公証役場の手数料
1契約につき11,000円、それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。

2. 法務局に納める印紙代     2,600円

3. 法務局への登記嘱託料     1,400円

4. 書留郵便料            約540円

5. 正本謄本の作成手数料     1枚250円×枚数

なお、任意後見契約と併せて、通常の委任契約をも締結する場合には、その委任契約について、さらに上記1が必要になり、委任契約が有償のときは、1の額が増額される場合があります。
 また、受任者が複数になると(共同してのみ権限を行使できる場合は別として)、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えることになります。

Q

体力が弱って、公証役場に出向くことができないときでも、任意後見契約を締結することができますか?

A

その場合には、公証人が、自宅や病院に出張して公正証書を作成することができます。なお、この場合には、上記1の手数料が50%加算される(16,500円になります。)ほか、日当と現場までの交通費が加算されます。

Q

任意後見事務の処理に必要な費用は、誰が出すのですか?

A

費用は、任意後見人が管理する本人の財産から出すことになります。契約で任意後見人の報酬の定めをした場合には、費用のほかに、報酬も本人の財産の中から支出されることになります。そして、これらの処理が適正になされているか否かは、任意後見監督人が監督します。

Q

任意後見人や任意後見監督人に、報酬は支払うのですか?

A

任意後見人に報酬を支払うか否かは、本人と任意後見人になることを引き受けた者との話し合いで決めることになります。ごく一般的に言えば、任意後見人を、第三者に依頼した場合には、報酬を支払うのが普通ですが、身内の者が引き受けた場合には、無報酬の場合が多いといえましょう。
 任意後見監督人には、家庭裁判所の判断により、報酬が支払われます。その報酬額は、家庭裁判所が事案に応じて決定しますが、本人の財産の額、当該監督事務の内容、任意後見人の報酬額その他の諸事情を総合して、無理のない額が決定されているようです。決定された報酬は、任意後見人が管理する本人の財産から支出されます。

Q

任意後見契約を、途中でやめることはできますか?

A

任意後見契約を解除することはできますが、下記のとおり、解除する時期により、その要件が異なります。

1. 任意後見監督人が選任される前
 公証人の認証を受けた書面によっていつでも解除できます。合意解除の場合には、合意解除書に認証を受ければすぐに解除の効力が発生し、当事者の一方からの解除の場合は、解除の意思表示のなされた書面に認証を受け、これを相手方に送付してその旨を通告することが必要です。

2. 任意後見監督人が選任された後
 任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに限り、かつ、家庭裁判所の許可を受けて、解除することができます。
 なお、前記のとおり、任意後見人について任務に適しない事由が認められるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。

Q

他に、何か参考になることはありますか?

A

任意後見人の仕事は、かなり大変な仕事ではないかと思われます。したがって、任意後見契約が無報酬の場合には、任意後見人の労苦に報いるために、将来自分に万一のことがあったときには、任意後見人になった者に、より多くの財産を相続させたり(任意後見人が相続人の一人である場合)、財産を遺贈したり(任意後見人が相続人でない場合)するなどの配慮をしておくことも、考えられてよいことではないかと思われます。

Q

自分が死んだ後、障害を持つ子供のことが気がかりですが、それに備える方法はないでしょうか?

A

まず、心配な子のために、然るべく遺言をしておいてあげることが、最低限必要と思われます。なお、心配な子の面倒を見ることを条件に第三者に財産を遺贈する場合のことは、遺言のQ&Aの該当箇所をご覧下さい。
 次に、その子に契約締結能力がある場合には、子自らに委任契約及び任意後見契約締結させておく(親が死んだり体力が衰えたりなどした時期に、受任者の事務を開始するようにしておく。)ことが可能ですので、受任者に人を得ることができれば、安心できるのではないかと思います。
 その子に契約締結能力がない場合(知的障害の程度が重い場合等)には、同じく信頼できる人を見つけて、その人との間で、子が未成年であれば親が親権に基づいて、親が子を代理して任意後見契約を締結しておくことができると考えられます。子が成年の場合でも、親自ら後見人となる審判を受けた上で、同様に任意後見契約を締結しておくことが考えられますが、これを否定する考えもあり、事前に公証人と相談されるとよいと思います。また、その人と親自身との間で、親が死んだり体力が衰えたりした後の、その子の介護及び財産管理等について委任する契約をしておくことも考えられる方法のひとつです。
 いずれにしても、いかに信頼できる人を見つけるかということがとても大切なので、信頼できる人が身近に見つからない場合には、各種社会福祉法人、弁護士会、リーガルサポートセンター、家庭問題情報センター等の組織に相談するなどして、信頼できる受任者を今のうちに見つけておく努力をしておかれてはいかがでしょうか。

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